2010年10月5日火曜日

昇給ゼロ時代にITスタッフのモチベーションを維持向上させるには

 これまであなたがITスタッフとして経験した中で最高の仕事は何だろう?(それが今の仕事でありますように)。また、それはなぜか。反論もあるだろうが、あなたにとって、その素晴らしい仕事に対するモチベーションの源泉は、報酬や昇給だけではなかったに違いない。あなたがその仕事を気に入ったのは、それが有意義で充実していたからであり、収入が良かったからではないはずだ。

 わたしが経験した中で最高のIT業務の1つは、若きエンジニアだったころに担当したものだ。わたしの雇い主は、わたしのエンジニアスキルは平均以下だが、リーダーシップ能力は平均より上だとすぐに判断した。雇い主は比較的短期間、わたしにエンジニアの仕事をさせた後、ほかのエンジニアを管理する仕事に就かせた。それがわたしのキャリアの中で、最も大変ながらもやりがいのあった仕事の1つだ。わたしは早急にITマネジメントのスキルを磨かなければならなかった。そしてチームのモチベーションを高め、膨大な設計作業を完了させなければならなかった。自分に欠けていたスキルが必要になったわけだ。もっとも、その一方でわたしはチームの中で最も給料が低かった。

 わたしは、この景気低迷下で昇給を保証することなく、優秀なITスタッフを引き付け、維持するためにモチベーションを喚起する方法を考えるとき、この経験を振り返る。この経験はわたしに、「ほとんどの人にとって、モチベーションはお金だけではない」ということを教えてくれた。お金は重要ではないということではない。しかし、公正な給与と処遇を得ていれば、われわれは有意義な仕事をすることを心から楽しむ。わたしはリーダーとして、「最も重要な役割の1つは、自分がITスタッフに頼む仕事が重要であり、面白みがあり、彼ら自身の成長目標の達成に役立つようにすることだ」ということを学んできた。

 簡単に聞こえるかもしれない。しかし、わたしはCIOとしてこの役割を果たすよう心掛けてきたが、容易なことではない。部下のITスタッフが行う仕事を、わたしと彼らの両方にとって有意義なものにしたければ、組織のニーズとスタッフ個々人のニーズを両立させなければならない。わたしはこの課題に、「Xモデル」(自分で命名)を用いて取り組んでいる。

 「X」(エックス)の形を思い浮かべていただきたい。2つの斜線の片方がIT部門のニーズを表すと考える。IT部門のニーズは、ITプロジェクトリスト、戦略的な取り組み、戦術的に必須な事項などにかかわっている。もう片方の斜線は、ITスタッフのキャリアや生活上の個人ニーズを表すとする。わたしはリーダーとして、この2つの斜線が交わり、「X」を形作るようにしなければならない。わたしは「X」の形が気に入っており、それは自分の仕事には両方の斜線が必要なことを思い出させてくれるからだ。つまり、2つの斜線がなければ「X」にならない。

 わたしはITスタッフに戦略計画や戦術計画の立案を担当させる際、「部門ニーズ」を定義して伝える。これによって、彼らはこの立案業務の背景を知り、自分の仕事がIT部門にとってどのような意義を持つかを理解できる。またわたしは、ITスタッフそれぞれと話し、各人の目標を理解することで、「個人ニーズ」を定義して本人と確認する。次に、われわれは個々人の成長計画を作成する。この成長計画では、わたしが彼らに任せる仕事が、彼らの興味、目標、将来やりたい仕事の希望にどのようにつながっていくかを定義する。

●スタッフのモチベーション向上のために

 数年前、わたしの会社のあるソフトウェア開発マネジャーから、彼女の目標はわたしのような仕事に就くことだと言われた。「わたしのような仕事? 若いうちから心臓発作やかいようになりたいの?」とわたしは聞き返した。彼女は、わたしのような仕事を楽しんでできるだけでなく、うまくこなせると確信していた。そこでわれわれは、彼女が「わたしのような仕事」に就くには、どのような経験が必要かについてブレーンストーミングを行った。続いて、われわれのプロジェクトポートフォリオと業務リストを調べ、どの業務を彼女に任せればよいかを検討し、IT部門のニーズと彼女の目標の両立につながる業務を選んだ。われわれの判断は、彼女は「重要だがあまり複雑でなく、彼女にITオペレーションの経験をもたらすインフラプロジェクトを率いるべき」というものだった。彼女はこの仕事を首尾よくこなし、続いてわれわれは、そうした両立につながる別の業務を彼女に担当させた。

 彼女にこれらの業務を任せたことは、彼女にもIT部門にもプラスになった。しかも、彼女は高いモチベーションを発揮し、これらの業務に全力を挙げて取り組んだ。公正を期していえば、彼女がIT部門の価値を高めていたため、わたしはそれを評価して彼女の報酬を増やした。だがいずれにしても、彼女の方からわたしに昇給を求めてきたことは一度もない。仕事が有意義で、自分の目標達成に役立っていたからだ。

 ここ数年、厳しい経済情勢が続いており、2010年も依然として先行きが不透明だ。このため、CIOとしてのわたしにとって2010年の重要目標は、Xモデルにおける「部門ニーズ」とITスタッフの「個人ニーズ」を両立させることだ。これは、優秀で熱心なITスタッフのモチベーションを維持向上させ、彼らが成長できるIT業務を提供する効果的な方法だ。しかもこの方法は、昇給を提示できないときでも実行できる。

引用元:エターナルカオスNEO(NEO) 情報局

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